チョウチョとお月さま③
ルンちゃんが、あきらめて、そのとなりの葉っぱのほうへ行こうとしたとき、目の前の葉っぱにいた幼虫が、ルンちゃんのほうをみて、いいました。「ねえ、きみもおなかがすいているのでしょ?ここで、ぼくといっしょに食べようよ。」「ほんとうにいいの? でも、これはあなたの葉っぱだから・・・。」ルンちゃんは、そういいながら、もうその葉っぱを食べたくて、しかたありませんでした。
「ぼくらは、いつすずめや大きな虫にねらわれるか、わからないんだよ。だから、みんなで助けあわないといけないと思うんだ。みつけた葉っぱをひとりじめする幼虫もいるけど、ぼくは、ちがうよ。さあ、たべよう。」とその幼虫は、いいました。
ルンちゃんは、そのことばに、こころをうたれました。「ありがとう、いっしょにいただくわね。わたしも、あなたのように、やさしいチョウチョになるわ。」ルンちゃんは、そういって、ふたりでなかよく一枚の葉っぱを分けあってたべました。
つぎの満月の夜、ルンちゃんは、はじめての脱皮をしました。そして、少しからだが大きくなりました。ルンちゃんが、のびをして歩きだそうとすると、それをみていた、モンシロチョウがいいました。「はやく、脱皮した皮をたべるのよ。そのままにしていたら、おそろしい虫たちに、みつかってしまうわ。」「ええ、わかったわ。ありがとう、モンシロチョウさん。」ルンちゃんは、すぐに皮をたべました。「わたしたちチョウチョは、茶色い幼虫のうちは、小さいから、いろんな虫たちにねらわれるのよ。気をつけてね。」モンシロチョウは、そういうと遠くへ飛んでいきました。
ルンちゃんは、森での生活が、だんだん不安になってきました。でも、今は葉っぱをたくさんたべて、早く大きくなることだけを考えることにしました。
ルンちゃんは、早く大きくなりたくて、あせっていました。そして、新月の夜に、つぎの満月になったら、もういちど脱皮をするけいかくをたてました。それまでのあいだ、とにかく葉っぱをいっぱいたべました。
満月の夜がやってきました。しかし、ルンちゃんは、葉っぱを食べすぎて、おなかをこわしてしまいました。これでは、脱皮はできません。そんなとき、お月さまがいいました。「ルンちゃん、あせらないで。無理をして、食べすぎないでね。すこしづつ、じょうぶなからだをつくっていかなくてはね。」ルンちゃんは、はっとして気がつきました。「ありがとう、お月さま。わたしには、わたしにあった成長のしかたがあるのね。」ルンちゃんは、ほっとした表情にもどりました。そして、けいかくを見なおすことにしました。