チョウチョとお月さま②

ある新月の夜、ルンちゃんは、生まれてきたところの葉っぱを、ほとんど食べてしまったので、新しい葉っぱを探さなければなりません。でも、その葉っぱから、離れたことがないルンちゃんは、勇気を出して近くの葉っぱに行くことができません。そんなとき、お月さまの声が、空から聞こえてきました。「ルンちゃん、こんばんは。今日は、新月だから、ルンちゃんからわたしの姿はみえないけれど、わたしからは、ルンちゃんがよく見えるよ。何も食べていないみたいだけど、どうしたの?」

 

ルンちゃんは、「こんばんは、お月さま。あのね、近くの葉っぱを食べにいきたいけれど、なんだかこわくて、ここから動けないの。」といいました。

すると、そのはなしをきいていた、木の妖精がいいました。「やあ、ルンちゃん。この木には、ルンちゃんのほかにも、いろんな幼虫さんがいるんだよ。だから、みんなとなかよく分けあって葉っぱを食べなくてはね。ルンちゃんは、小さくて茶色いから、すずめには見つからないよ。さあ、勇気をだして、行ってごらん。」

 

「ありがとう、木の妖精さん。もうおなかペコペコなの。すぐにいくわ。」とルンちゃんがいいました。それを見ていたお月さまも、「ルンちゃん、がんばってね。」とはげましてくれました。「ありがとう、お月さま。」ルンちゃんはお礼をいって、その葉っぱから初めてはなれて、近くの葉っぱにむかいました。

ルンちゃんが、近くの葉っぱにいくと、そこには、もうほかの幼虫がいました。そして、おいしそうに葉っぱを食べてました。「こんにちは。わたし、とってもおなかが空いているの。ここでいっしょに、葉っぱを食べてもいいかしら?」とルンちゃんは、いいました。すると、その幼虫は、「だめだよ。この葉っぱは、ぼくがさきにみつけたんだよ。だから、ぼくのものだよ。」といいました。

 

ルンちゃんは、しかたなく、ほかの葉っぱをさがしました。でも、こんどの葉っぱも、すでにほかの幼虫が、むしゃむしゃと葉っぱを食べていました。ルンちゃんは、さっきのことを思い出して、もう声をかける勇気もでませんでした。