三瓶山(北の原)霧の中を散策

今回のティクレ・ネイチャーセラピープログラムでは、台風の影響で、思いがけないサプライズ体験をすることができました。


この日は、朝から雨で森林セラピーが出来るのか、森林セラピスト(ティクレ出雲支部長)の判断に従うことになりました。


雨が酷くなるようであれば、森林セラピープログラムは中止となります。けれども、ネイチャーセラピーを楽しみに島根に来られた方に、残念な思いはさせたくないという、私たちの強い願いが通じたのか、雨風は強すぎることなく心地よい霧雨になりました。


このお天気だと逆に、森林セラピーにとっては、とても適している環境なのだと森林セラピストさんが言うので、その言葉に期待が高まりました。


まずは、三瓶山国立公園の北の原エリアにて、草原を散策…。この北の原には、くぼ地に湧き水が溜まってできた「姫逃池(ひめのがいけ)」があります。その昔、この地には長者が住んでいたそうで、その長者の娘「お雪」の伝説が伝えられています。


その伝説とは、その昔、三瓶山の北の原に長者屋敷があり、この地は「長者原」と呼ばれていました。長者には美しい娘「お雪」がおり、家族は幸せに暮らしていました。お雪には、将来を誓った若者がいました。ところが、美しいお雪に目を付けた山賊が、お雪を「嫁に欲しい」と、力ずくで長者に迫ってきました。困り果てた長者は、泣く泣く娘を手放すことにしました。


山賊は大勢の手下を連れて、お雪を受け取りに長者屋敷にやって来ました。このことを知った若者は勇敢に、無謀にもたった一人で山賊に切り込みました。しかし、残念ながら若者は多勢の山賊たちに討たれてしまいました。


若者が亡くなったことを知ったお雪は、山賊の追ってから逃げ延びて、この池までたどり着きます。お雪は、身を守るためにこの池に入水し、若者の後を追いました。この「姫逃池」の畔にある大岩は、若者が山賊に切りつけた刃先により、キレイに二つに割れたと伝えられ「姫逃石」と言われています。


この姫逃石の切れ目に小枝を落とし、途中で引っかかって落ちなかったときは、恋が成就すると言われ、「縁結びの石」、「恋占の石」として、密かな恋愛成就のスピリチュアルスポットになっています。


四季折々で、池には天然記念物のカキツバタ(言伝えでは、カキツバタの白と紫の花はお雪と若者の化身だそうです)やスイレンなどが咲いて、「若者とお雪」の伝説に悠久の時の流れを感じさせ、この美しい自然の風景を親しむことができます。


今回は、この古の伝説の場所を散策してみました。視界が霧に包まれ、幻想的な世界を体験しました。霧の中から聴こえてくる虫の鳴き声に、身も心も癒されます。


一定の距離感を保ちながら歩いていると、少し前を歩いている人の姿が霧の中で見えなくなってしまいます。視界が遮られ、この場所(世界)に、たった一人だけいるような、不思議な感覚になりました。


けれども、孤独感はなく、五感を研ぎ澄ませると霧の中から、風の流れやささやき、鳥のさえずりや虫の鳴き声、草木の香りといった様々な夏の薫り、霧の粒子がキラキラと視界に入ってきました。普段は、気づけない自然との対話がそこにありました。


思いっきり深呼吸をして、この大地にグラウディング(地に足をつけること)をしてみました。大地から湧き上がってくるエネルギーと山間から降りてくるエネルギーが、私の体内の潜在エネルギーと共鳴するのを感じることができました。


台風の影響から思いがけない貴重な体験をすることができ、壮大な自然に感謝です。